
第2次トランプ米政権が1月に発足してから半年。「米国の黄金時代」を築くと宣言したトランプ大統領は高関税措置の実施や不法移民対策の強化などの公約を次々と実行している。強権的な手法によって、米国の姿はどのように変容しているのか。現地から報告する。
果樹園に治安当局の車
米西部カリフォルニア州中央部のベーカーズフィールドで果樹園を経営するグレッグ・テシュさん(61)は3月初旬の早朝、メキシコ出身の男性作業員からの電話に胸騒ぎを覚えた。
「果樹園の入り口に不審な車が止まっている。怖くてそのまま通り過ぎた」
自宅から駆けつけると入り口に移民・税関捜査局(ICE)や連邦捜査局(FBI)、国土安全保障省(DHS)の車両計4台が並んでいた。不法移民や重大犯罪、テロなどに対応する治安当局だ。
捜査員らに事情を尋ねると「仕事をしているだけだ」と素っ気ない答えが返ってきた。不法移民や犯罪者らが働いているとみて捜査に来ているのは明らかだった。この日、収穫作業に従事する予定だった作業員十数人は誰も果樹園に現れなかった。
重労働の現場で人手不足に懸念
トランプ政権は1月の発足直後から、不法移民対策の強化を打ち出し、「史上最大の国外追放」に着手している。当初は「犯罪歴のある不法移民を中心に取り締まる」としていたが、摘発対象を急激に拡大。農場や工場、ホテルなどで働く労働者にも広がっており、重労働の現場では人…
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