
ロシアの侵攻を受けるウクライナ軍が、国境を接する露西部クルスク州への越境攻撃を開始して8月6日で丸1年となる。
露軍は4月、ウクライナによる占領地域の「完全奪還」を表明した。だが、ウクライナ軍は攻勢継続を主張し、国境周辺で戦闘が続く。
7月下旬、モスクワから約450キロ南へ、夜行列車で一晩かけてクルスク州の州都クルスク市に向かった。
この州はウクライナ北東部スムイ州に隣接し、日本の関東地方に迫る広さがある。州都はほぼ中央に位置し、国境地帯までは約100キロだ。
サイレンなっても世間話

24日朝に到着したクルスク市中心部の鉄道駅周辺は、一見平穏だった。バス待ちの列やカフェに出入りする人たちの姿がある。
「ウーー、ウーー」。突然、重苦しいサイレンが数分間、鳴り響いた。モスクワでは聞いたことのない音だ。
「ミサイル警報だ。別に心配しなくていい」。近くの男性はそう言うと、気にとめる様子もなく立ち去った。周囲の人々も慌てる様子はなく、世間話をしたり、横断歩道の信号待ちをしたりしている。
手元のスマートフォンで、通信アプリの露軍現地作戦本部のチャンネルを開いてみた。
「ミサイル警報」の表示がある。屋内では窓のない場所に、外では最寄りの建物や避難場所に移動するよう指示する内容が投稿されていた。
市街地の大通りには、無人航空機(ドローン)攻撃などに備えて、コンクリート製とみられるコンテナ型のシェルターが点在する。だが、警報を聞いて逃げ込む人は誰もいなかった。
日中、街の中心部では、広場を歩く親子連れや水遊びをする子どもたちの姿があり、ショッピングモールには多くの買い物客が訪れていた。市民の生活ぶりはモスクワと大差がない。
ドローンやミサイルは怖くないのだろうか? 通りを歩く中年女性に尋ねるとこう答えた。
「前は恐ろしかったし、警報を聞けば逃げ場を探した。でも、こんな世界に暮らすことに慣れてしまった。ベッドで警報を聞いても、そのまま横になっている」【クルスクで山衛守剛】
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