
侵攻する側のロシアが地上で攻め込まれた、ほぼ唯一の地域が西部クルスク州だ。昨年8月6日のウクライナ軍による越境攻撃の奇襲開始から約1年が経過した今、どうなっているのか。7月下旬、州都クルスク市で取材した。
「生死の分かれ目」
クルスク市の中心部から車で西へ約20分走ると、マコフスキー通りがある。7月10日午後7時ごろ、たまたま外にいた地元女性(34)は、「ブーン」というバイクの走るような妙な音を耳にした。
目を上げると、すぐそこに無人航空機(ドローン)が迫っている。大慌てで自宅マンションに駆け込み、危うく難を逃れた。4歳の娘がおり、いつもなら一緒に外を散歩している時間だった。
ドローンは近くの戸建て住宅に落下して爆発し、73歳の住民男性が死亡した。
この爆発で、女性の部屋でも窓が破損し、車も壊れたという。女性はそれまでは州内でのドローン攻撃を深刻に受け止めていなかった。ところが、それ以来、外を歩くのが怖くなり、バイクの音を聞くだけでパニックになるという。
「生死の分かれ目がある。出かける時は、どこに身を隠せるかと考えるようになった。忍耐が必要で、とてもつらい」
一晩で53機のドローンを迎撃
露軍は今年4月、クルスク州の「完全奪還」を表明した。だが、ウクライナ軍のシルスキー総司令官は6月下旬、州内でまだ約90平方キロを支配下に置いていると発表し、越境攻撃の継続を強調した。国境周辺で戦闘が続く。ウクライナ東部の主な戦線とは離れた場所での戦いだ。
一方、ロシアは日々、ウクライナ各地の都市へ大量のドローンを飛ばし、ミサイルを撃ち込む。対するウクライナ側もクルスク州など露西部へのドローン攻撃を強化し、極めて局地的ながら反撃している。
露国防省の発表では、クルスク州では7月、…
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