
ロシアの侵攻を受けるウクライナ軍が、国境を接する露西部クルスク州への越境攻撃を開始して8月6日で丸1年となる。
クルスク州当局の発表によると、5月末現在で判明している越境攻撃による州内の民間人の死者は304人、行方不明者は576人に上る。ドローン攻撃により、その後の死者数は増加している。
昨年8月にウクライナ軍による越境攻撃が始まって以降、州内の国境周辺からは多くの人たちが州都クルスク市などに避難し、現在も戻れない状況が続く。
地雷が阻む帰還
クルスク州南西部に位置し、ウクライナと国境を接するのがスジャ地区だ。
中心となるスジャ市は、ウクライナ軍が越境攻撃を開始して約10日後に「制圧」を宣言し、軍事拠点としていた。今年3月に露軍が奪還した。
スジャ地区長として7月中旬に選任されたばかりのアレクセイ・スピリドノフ氏(49)が、クルスク市内で取材に応じた。
スピリドノフ氏によると、地区内には食肉や穀物の加工場がいくつも立地し、住民の多くは農業に従事してきた。
越境攻撃で学校や病院が破壊され、農地には無数の地雷が埋設された。地区の住民約2万4500人のうち、国境周辺には150人ほどが避難せずに残っているという。
州当局は7月中旬、国境周辺で住宅242棟の損壊を確認し、6万ヘクタール以上の土地で約60万発の地雷を処理したと発表した。
地雷は避難者の帰還を妨げる。撤去が進められているが、一筋縄ではいかない様子だ。7月14日には、作業中の非常事態省職員2人が地雷の爆発で死亡した。
避難を拒む人も
スピリドノフ氏は、地区長になる前はクルスクの非営利団体「パトリオット」の代表として、軍事・愛国教育や民兵組織の創設に携わってきた。
越境攻撃を受けて、他の支援組織と協力して住民3000人以上を国境周辺から退避させたという。
攻撃開始の直後には自らも現地に救援に入った。「自力では逃げられない寝たきりの人や多くの年金生活者が取り残されていた」。こう振り返る。
ただ、説得しても避難を拒む人たちもいた。
国境近くで牛を飼育していた女性は、…
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