
2016年夏、上司の教授に告げられた。
「半年間の期間を空けないと、この先は雇用できない」
関西地方の私立大で勤務する研究者の40代男性は当時、任期5年目の助教。任期最終年度の出来事だった。
13年施行の改正労働契約法では、有期雇用の通算契約年数が5年を超えると無期雇用への転換を申し込むことができ、雇用主は拒否できない。研究者については研究活動が長期に及ぶため、特例で10年と定められている。
ところが、大学では無期雇用への転換を阻む行為が横行している。学術団体が24年9月に理系の研究者約2500人を対象に行った調査では、契約と契約の間に6カ月以上の空白期間があると通算契約期間のカウントがリセットされる「クーリング」を強いられた研究者が周囲にいたと証言する人は、3割近くに上った。通算の契約年数がリセットされると、無期雇用への転換は遠のくことになる。
クーリングを挟む独自の運用
男性によると、大学は有期雇用の研究者の通算契約期間が10年を超えないよう、任期5年を迎えた時点でクーリング期間を挟む独自の運用をしているという。教授はこれを考慮し、男性に半年間のクーリングを打診した…
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