広島・長崎両市にある国立原爆死没者追悼平和祈念館に寄せられる被爆者の手記がここ数年、増加している。広島では今年4~7月末、昨年同期比で約2・5倍に急増していることが分かった。祈念館を管轄する厚生労働省が被爆80年となる2025年度、全国の被爆者から体験記を募っているのに加え、平均年齢が86歳を超えた被爆者が、自らの体験を後世に残そうとする動きが広がっているためとみられる。
長崎では21年度に36編の手記が寄せられ、22年度69編▽23年度79編▽24年度81編――だった。広島は21年度51編▽22年度69編▽23年度91編▽24年度89編。また25年度、広島は7月末までの4カ月間で60編となり、昨年度同期(23編)の2・5倍以上に上っている。
被爆者の高齢化とともに、世界各地で核使用の危機が高まり、原爆が引き起こした悲惨な体験を語り継ごうとする動きが背景にあるとみられる。国立広島原爆死没者追悼平和祈念館の担当者は「手記に添えられた手紙には『被爆体験を語れる最後の世代なので書いた』などと記されている。後世に残さなければという思いがあるのだろう」としている。
国立原爆死没者追悼平和祈念館は被爆関連資料の収集と利用などを目的としており、広島で約15万編、長崎で約13万編の手記を所蔵している。手記は館内の検索システムで閲覧できるほか、承諾を得たものはホームページにも掲載している。【安徳祐、根本佳奈】
Comments