
2023年4月の桐生市長選で、再選した荒木恵司市長(66)の陣営に自身が代表を務める政党支部「自由民主党群馬県桐生市第四支部」から寄付した179万円を、政治資金収支報告書に記載していなかったことが毎日新聞の取材で判明した。神戸学院大学の上脇博之教授(法学)は「政党支部から候補者への寄付自体は違法ではないが、不記載は政治資金規正法違反に当たる可能性が高い」と指摘。荒木市長は不記載を認め、収支報告書を訂正した。【加藤栄、遠山和彦】
毎日新聞は①荒木市長陣営の選挙運動費用収支報告書②自民党支部の政治資金収支報告書(2023年分)――を分析。①には自民党支部からの寄付として、同年4月22日に179万円の収入があったと記載されていた。一方、②には陣営に寄付したと書かれておらず、支出を確認することができなかった。
毎日新聞は7月22日、荒木市長に質問状を提出。同30日、荒木市長と支部の会計担当者が取材に応じた。
会計担当者の説明によると、選挙の告示前、個人や法人などから「陣中見舞い」などとして寄付の申し出があった。一旦、自民党支部で寄付を受け、それを荒木市長の資金管理団体「荒木けいじ後援会」に移して、選挙の費用に充てたという。資金管理団体の政治資金収支報告書をみると、選挙関係費の支出として陣営の支出と同じ項目が七つあり、合計額が陣営の総支出額と同額だった。

この自民党支部は荒木市長の資金管理団体に対し、23年4月1日に250万円、同22日に216万円を寄付していた。このうち不記載だった179万円について、会計担当者は「216万円の寄付の中に含まれていて、記載が間違っていた」と不記載を認めた。
不記載の理由については「資金管理団体の活動の中に市長選の活動が含まれると考えていて、資金管理団体で費用をまかなうものだと思っていた」と述べ、「陣営に出さなくてはいけないお金を資金管理団体に出していた」と説明した。
この件について、政治資金に詳しい神戸学院大の上脇教授は「179万円という大きな額を記載し忘れたというのはあり得ない」とした上で、「陣営と資金管理団体で同じ項目の支出があるということは、つまり二重計上であって、不記載だけではなく虚偽記入の疑いもある。これが裏金になった可能性も拭えず、会計帳簿などの資料を明らかにして説明責任を果たすべきだ」と指摘する。
荒木市長は取材に対し「(会計担当者に)基本的にお願いをしていて、不記載については分からなかった」「事務的に何をしなくてはいけないか認識できていなかった」と釈明。不記載の179万円は出所が不明で、裏金から捻出した可能性については「世間的に言われている裏金という感覚は全くない」と否定した。
荒木市長らは7月29日に県選挙管理委員会で支部と資金管理団体の政治資金収支報告書を、同31日に桐生市選管で選挙運動費用収支報告書をそれぞれ訂正。上脇教授は「もともと領収書まで提出しているものを、訂正するのはおかしい。不透明な資金の流れだということを自白しているようなものだ」と批判した。
Comments