ドローン攻撃に脆弱な原発 対策追いつかず「想定外」に限界も

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九州電力の玄海原発1号機(手前右)、2号機(手前左)、3号機(奥右)、4号機(奥左)=佐賀県玄海町で2024年4月24日、本社ヘリから 拡大
九州電力の玄海原発1号機(手前右)、2号機(手前左)、3号機(奥右)、4号機(奥左)=佐賀県玄海町で2024年4月24日、本社ヘリから

 ドローンの軍事利用が世界で急速に拡大する中、27日未明、九州電力の玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)の周辺に突如として緊張が走った。原発構内にドローン3機が侵入したという。原子力規制委員会はその後「ドローンと思われる光」と訂正したが、攻撃可能な機体が容易に原発建屋に近づける、警備上の脆弱(ぜいじゃく)性が浮き彫りになった。

 佐賀県の原子力安全対策課には26日午後10時20分ごろ、玄海原発側から電話で連絡が入った。担当職員や副知事ら6人が急きょ、情報収集に追われた。想定外の事態に、担当者は「県民が安心できるよう『対策を』と言い続けるしかない」と漏らした。

 原発は航空機によるテロ対策を想定しているものの、ドローン攻撃への対策は追いついていないのが現状だ。2013年7月に施行された原発の新規制基準は、01年の米同時多発テロを教訓に、航空機によるテロへの備えを求めている。衝突で施設が破壊されても炉心溶融を遠隔操作で防げるよう、特定重大事故等対処施設の設置が必要だ。

 一方、ドローン攻撃が世界的に注目されるようになったのは、近年になってからのこと。新規制基準ではドローンの侵入や攻撃は想定されていない。

 テロ対策に詳しい公共政策調査会の板橋功研究センター長によると、国内外の原発では国際原子力機関(IAEA)の勧告に基づき核物質の盗難や破壊への対策が施されているが、ドローン対策は最近の問題のため勧告に含まれておらず、国ごとに対応している。

 一般的に、原発の敷地周囲などには侵入者に備えて監視カメラやセンサーが置かれている。しかし東京科学大の奈良林直特定教授(原子炉工学)は「撮影できる範囲には限界があり、小型ドローンは捉えられない可能性がある」と指摘する。今回もカメラには映っていなかった。

 ただ、日本の原発の警備が海外に比べて劣っているわけではないという。板橋氏は「原発の敷地内に警察の部隊が常駐し、海側では海上保安庁が守っている。警察も電力会社にドローン対策の指導をしている」と説明する。

 自衛隊では、ドローンが施設に侵入した場合は電波で飛行を妨害する対策を取る。しかし原発は敷地が広大なため、板橋氏は「全体をカバーする装置をつけるには膨大なコストがかかる。今まで通り電力会社と警察、海上保安庁、自衛隊との連携や訓練を続けるのが大事だ」と語る。

 一方、奈良林特定教授は、原発の重要施設を、ゴルフ練習場に設置されているような網目状のフェンスで覆うことを提案する。「ドローンは軽いので、それほど頑丈なものでなくてもフェンスに絡まるだけで飛行を妨害できる」と話す。【小川祐希、成松秋穂、木許はるみ】

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