原発で事故が起きた場合、原発から5~30キロの住民は、状況によって自家用車やバスで避難する途中で、車の汚染検査を受けることになる。検査を実施するのに、大人数の動員が必要な自治体もあり、中国電力・島根原発に近い鳥取県では、1日あたり最大で1650人を動員する計画だ。
原発事故は、地震などとの複合災害も想定される。混乱を極める中で、道府県は検査のために多くの人手を円滑に確保することを迫られる。
原発5~30キロ圏の住民が対象
検査は「避難退域時検査」と呼ばれ、事故の状況によって原発から5~30キロ圏の住民が対象となる。検査対象の住民が暮らす21道府県が、避難する住民が乗る車のタイヤなどに放射性物質が付いていないかを確認する。
毎日新聞は21道府県に、汚染検査で1日あたり最大で何人動員するかを取材した。最も多かったのが鳥取県で、次いで島根県の1350人だった。原発事故の時に開設を想定している検査会場が鳥取県で8カ所、島根県で14カ所と多いことが影響している。
ほかに大人数の動員を想定しているのは、東北電力の女川原発が建つ宮城県の約900人、九州電力の川内(せんだい)原発がある鹿児島県の801人、関西電力の美浜原発など四つの原発が建つ福井県の800人、九電の玄海原発がある佐賀県の792人などだ。
政府の避難計画がある自治体でも、何人の動員が必要なのか見立てがない所もあった。
北海道電力の泊(とまり)原発が建つ北海道、東京電力の柏崎刈羽原発のある新潟県、四国電力の伊方(いかた)原発がある愛媛県、玄海原発の30キロ圏に含まれる福岡県と長崎県だ。
5道県とも「実際に事故が起きてから、状況によって検査会場をどこに何カ所設けるかを決める。それによって動員数も決まる」と説明する。
大人数の動員が必要になった場合、道府県は自分たちの職員だけでは対応できないため、大手電力会社から社員を派遣してもらうことにしている。【木許はるみ、砂押健太】
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