長野県松本市の城山公園と中山霊園で7月上~下旬、夏には見られないはずの冬鳥・ジョウビタキの親子を記者が目撃した。通常は春に北の繁殖地に渡るが、渡らなかった雌雄で繁殖したとみられる。ジョウビタキは近年、諏訪地域をはじめ、国内各地で繁殖した事例が報告されている。
城山公園で目撃したのは巣立った幼鳥3羽と雄の親鳥。まだら模様の羽毛を持つ幼鳥は地面で翼を広げたり、周辺を飛び回ったりしていた。近くにいた雄親が幼鳥に給餌する場面も見られた。中山霊園でも幼鳥2~3羽と雄親を目撃した。
ジョウビタキは全長15センチほどの小鳥。全国に冬鳥として飛来し、春に中国やロシアに渡って繁殖する。日本での越冬中には市街地でも姿が見られ、愛鳥家に人気がある。
諏訪地域では2010年、日本野鳥の会諏訪支部が本州で初めて八ケ岳山麓(さんろく)の富士見町で夏に繁殖を確認した。それ以前は北海道で繁殖事例があった。その後、同支部は八ケ岳の山梨県側や霧ケ峰高原などでも繁殖を確認した。繁殖は10年代の調査で継続確認され、この地域では定着したとみている。
10年に富士見町で繁殖を確認した日本野鳥の会元諏訪支部長の林正敏さん(81)は「あれよあれよという間に繁殖が広がった。今は諏訪の市街地でも繁殖し、春以降も普通に見られる鳥になった」と語る。林さんによると、県外では静岡や岐阜、高知各県など西日本を含む各地で繁殖したとの情報がある。
松本市に住む信州野鳥の会顧問の上條恒嗣さん(76)によると、同市内でもアルプス公園などで繁殖した情報がある。上條さんは「海を越える渡りにはリスクがある。日本で安心して子育てができ、渡りを避けることができるとすれば、鳥にとってはいいことだろう」と話している。【武田博仁】
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