
原発事故が起きても、住民は避難計画の通りに逃げることができないかもしれない。懸念されていることの一つが、放射性物質の汚染検査だ。
原発から5~30キロ圏で暮らしている住民は自家用車や乗り合いバスで避難する途中、放射性物質がタイヤなどにくっついていないか調べてもらうことになる。
全2回の第2回です。
1・国のマニュアル、実効性は 原発避難車両の汚染検査 自治体の現実
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検査では、放射性物質の測定器などの資機材を使う。実は、多くの自治体で足りていない。
政府の原子力防災会議は6月下旬、東京電力が再稼働を目指す柏崎刈羽原発(新潟県)の事故に備えた避難計画を了承した。
これまでにも、再稼働をした原発を中心に9原発の避難計画が了承されている。
原発事故は自然災害との複合災害も想定されているが、緊迫する中で果たして円滑な検査が実施できるのか。
200キロ離れた会場へ
2月3日、柏崎刈羽原発が建つ新潟県内の倉庫から、2台のトラックが出発した。茨城県の日本原子力発電・東海第2原発で事故があったという想定で実施された、汚染検査の資機材を融通する訓練だった。
新潟県を出発したトラックの目的地は、約200キロ離れた茨城県内の汚染検査の会場。荷台には、タイヤなどに付いた放射性物質を測る検査機器「ゲート型モニター」やテントなど資機材の一式が積まれ、翌日には到着した。
新潟県の担当者は手応えを感じていた。「連絡体制や発送までの流れを確認できた」
原発から5~30キロ圏に暮らす住民が最も多いのは茨城県(約85万人)で、次いで中部電力の浜岡原発がある静岡県(約77万人)が続く。新潟県も約40万人に上る。
茨城の所有機材は1会場分のみ
それだけに、各県が汚染検査の会場を設けるとなると、複数箇所が必要になる。
汚染検査に備えて茨城県が所有している自前の資機材は1会場分、新潟県も4会場分にとどまる。静岡県は7会場分。3県とも、事故の状況によっては自前の資機材だけでは対応しきれない可能性があるのだ。
それならば、5~30キロ圏内の人口が特に多いこの3県で、資機材を融通し合うことはできないのか。内閣府は2020年にそんな検討を3県と始めた。 静岡県の担当者は「他地域との融通の検討が進められている中、現時点でゲート型モニターの新規の購入は内閣府から認められていない」と話す。
その理由について、内閣府の担当者は「購入費や保守管理費を抑えるため」と説明する。
融通を模索する中、資機材の輸送手段に関して気がかりなことが示されていた。
毎日…
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