宇宙で凍結したマウスの精子幹細胞から繁殖成功 京大やJAXAなど

Date: Category:環境・科学 Views:2 Comment:0

京都大=京都市左京区で、野口由紀撮影 拡大
京都大=京都市左京区で、野口由紀撮影

 京都大や宇宙航空研究開発機構(JAXA)などの研究チームは、宇宙で半年間凍結保管した「精子幹細胞」を移植したマウスが、自然交配で繁殖に成功したと発表した。強い放射線や無重力状態にさらされる宇宙環境で、精子のもととなる細胞の繁殖能力には影響がなかったことが分かり、今後は次世代へどのような影響を与えるかなどを調べる。

 これまで宇宙環境で実施された動物実験では、精子が減少することなどが報告されてきたが、原因は未解明だった。

 研究チームは、宇宙環境で精子を作る細胞にどのような影響が起きるのかを調べるために、精巣から採取した精子幹細胞を培養させたGS細胞を凍結乾燥(フリーズドライ)し、2022年7月から半年間、国際宇宙ステーション(ISS)内で冷凍保管。23年1月に地上に帰還後、解凍してDNAの損傷がないかや、正常にたんぱく質が合成されているかなどを解析した結果、地上で培養したものと大きな差はなかった。

宇宙で凍結保管した精子幹細胞を用いたマウスの繁殖実験のイメージ 拡大
宇宙で凍結保管した精子幹細胞を用いたマウスの繁殖実験のイメージ

 更にこのGS細胞を無精子症のマウスの精巣に移植し、精子が作られていることを確認。雌と自然交配させ、8匹中3匹が繁殖に成功した。地上で培養したGS細胞と同等の確率だったことから、少なくとも半年間の宇宙滞在で、マウスの精子幹細胞の妊娠・出産能力に影響がないことが分かった。

 生まれたマウスは外見上の問題はなく、DNAを解析しても疾患の発症などに関係する後天的な変化は確認されなかった。一方で、地上のものと有意差は見られなかったが、解凍したGS細胞からDNAの損傷が認められたことから、寿命の長さや次世代への影響を継続して調べる必要があるとしている。

 研究チームを率いた京大の篠原隆司教授(生殖生物学)は、「精子幹細胞に異常が起こると、子孫にも影響する可能性がある。今回の研究でマウスが健康に生まれることが分かったが、子孫の代までDNA損傷についてリスク評価する必要がある」と話した。

 研究成果は14日、米科学誌「ステム・セル・リポーツ」電子版に掲載された。【田中韻】

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