石破茂首相は終戦の日の15日、戦後80年の首相談話を出さなかった一方、政府主催の全国戦没者追悼式の式辞で「あの戦争の反省と教訓」を胸に刻まなければならないと述べて「反省」の語句を13年ぶりに復活させるなど、「石破カラー」をにじませた。
首相の式辞で1994年に村山富市氏が「深い反省」を表明して以来、2007年の安倍晋三氏も含め、12年の野田佳彦氏までの歴代首相は「反省」に言及してきた。だが、第2次安倍政権下の13年以降、「反省」が消え、アジア諸国への加害責任に明確に触れることはなくなっていた。その後の菅義偉、岸田文雄両首相も言及しなかった。
「教訓」の語句は岸田氏が22~24年の式辞で、第2次安倍政権下の戦後70年談話を踏襲して「歴史の教訓を深く胸に刻む」と述べていた。石破首相が使った「反省」はより踏み込んだ表現で、首相周辺は「(式辞の中で)石破首相が力を入れた部分だ」と解説した。
首相の式辞で「反省」が消えた2年後の15年の追悼式から、天皇陛下のおことばに「深い反省」が新たに加わり、以後継承されている。今年は首相と陛下がともに「反省」に言及した。
また石破首相は式辞で、ロシアによるウクライナ侵攻などの国際情勢も念頭に「いまだ争いが絶えない世界にあって、分断を排して寛容を鼓(こ)し、より良い未来を切り開きます」と、寛容な精神による対話の重要性も説いた。
一方、閣議決定による「首相談話」の発出は、戦後70年の安倍首相談話の書き換えにつながると反発する自民党保守派に配慮して見送った。ただ、別の機会に首相個人の「見解」を表明することに意欲を示す。親交のある日本総合研究所の寺島実郎会長と11日に会食するなど、有識者から個別に意見聴取を進める。
これに対し保守派は警戒感を強める。小林鷹之元経済安全保障担当相は15日、「謝罪をし続ける宿命を次の世代に負わせるべきではない、との思いが込められた70年談話が全てだ」と記者団に述べ、新たな見解の表明をけん制した。【光田宗義、大野航太郎、鈴木悟】
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