声で読もう宮沢賢治/45 「氷河鼠の毛皮」/上 書き出しで引きつけられ

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 このおはなしは、ずいぶん北の方の寒いところからきれぎれに風に吹きとばされて来たのです。氷がひとでや海月(くらげ)やさまざまのお菓子の形をしているくらい寒い北の方から飛ばされてやって来たのです。

 十二月の二十六日の夜八時ベーリング行の列車に乗ってイーハトヴを発(た)った人たちが、どんな眼(め)にあったかきっとどなたも知りたいでしょう。これはそのおはなしです。(「氷河鼠(ねずみ)の毛皮」)

 宮沢賢治の童話は書き出しがとてもおもしろく、これから始まる物語の景色が目の前にさあっと広がるようです。例えば「やまなし」は「小さな谷川の底を写した二枚の青い幻燈(げんとう)です」、「どんぐりと山猫」なら「おかしなはがきが、ある土曜日の夕がた、一郎のうちにきました」。他にもたくさんの作品で見られます。

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