
「女性が亡くなっているのが見えます」
異変に気づいた担当のケアマネジャーが110番した。記録的に短い梅雨が明け、2週間たった7月中旬だった。
現場は、大阪府吹田市の住宅街にある四軒長屋。通報からほどなくして、警察や消防が平屋建ての一室を調べた。
89歳の男性はトイレの前で、92歳の女性はベッドの上で、息絶えていた。
医師が2人の遺体を詳しく調べた結果、男性が先に虚血性心疾患で亡くなり、女性は熱中症で死亡したとみられる。
猛暑日記録した7月初旬
2人が見つかるまで約1週間がたっていた。死亡した可能性が高い7月初旬の大阪は、35度を超える猛暑日を記録していた。
「この暑さでしんどかっただろう」。近くに住む男性(79)は悼んだ。
事実婚だった2人は長くこの部屋に住んでいた。
近所の人たちによると、女性は育った近くの街の自慢話が好きで、立ち話は1時間を超えることもあった。
明るく、元気な頃は片手で押すタイプのシルバーカーでスーパーによく出かけていた。
ところが5~6年前、体調を崩したのをきっかけに姿を見せなくなった。
寝たきりになったという女性。地域の敬老会に名を連ねていたが、参加できなくなった。
役員が会合で配られた菓子やケーキを届けると、「ありがとう」と受け取っていたのが男性だった。
いわゆる「老老介護」の状態で、男性が洗濯物を干したり、自転車で買い物に出かけたりする姿が見かけられていた。
2人が暮らした部屋に…
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