中国の名刹・少林寺のスキャンダル=畠山哲郎(北京)

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少林寺住職を務めていた釈永信氏(左)=中国河南省で2017年7月29日、Oriental Image・ロイター 拡大
少林寺住職を務めていた釈永信氏(左)=中国河南省で2017年7月29日、Oriental Image・ロイター

 少林寺、と聞けば、大抵の日本人が思い出すのはカンフー(中国武術)だろう。1982年公開の中国・香港映画「少林寺」では、寺に伝わる武術「少林拳」が取り上げられ、この中国河南省の名刹(めいさつ)を世に広めるきっかけにもなった。

 その少林寺が、スキャンダルに揺れている。7月27日、住職の釈永信氏が、寺の資産やプロジェクトの資金を横領した疑いがあるとして、複数の部門による合同調査を受けていることが少林寺の発表で明らかになったためだ。

 「罪状」はこれだけにとどまらない。発表によれば、釈氏には重大な戒律違反があり、長期にわたり多くの女性と不適切な関係を持ち、子供もいたという。横領疑惑は刑事事件になる可能性があるという。

 釈氏を巡っては、2015年にも、寺の資産の「私物化」や女性問題についてインターネット上で告発する投稿があり、一時当局が調査に乗り出す騒ぎになった。今回の発表前にも、「釈氏が当局に連行された」との情報がネットで飛び交った。

 仏教界の反応は早かった。中国仏教協会は翌28日、「釈氏の行為は非常に悪質で、仏教界の名声を傷つけ、僧侶のイメージを損ねた」とし、僧侶の身分を取り消すことに同意したと表明。これを受け、少林寺も29日、新たな住職を任命したと発表した。

 少林寺のホームページなどによると、釈氏は1965年生まれ。87年以降、寺院内の事務の責任者を務め、少林寺の「ビジネス化」を進めた。経営学修士(MBA)も取得したとされ、その手腕からネット上で「少林寺CEO(最高経営責任者)」と呼ばれた。02年以降は中国仏教協会副会長も務めていた。

 香港紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」は8月1日の社説で、釈氏による積極的な事業拡大は精神的な悟りなどを追求する寺の理念と相いれないと指摘。スキャンダルにより「寺の経営と発展の方向性を見直すチャンスが生まれた」と指摘した。

 私は幼少期、テレビで放映された少林寺の映画を見て、主演のジェット・リー氏に憧れた記憶がある。中国国内にも、映画や少林寺のファンは多いはずだ。清廉なイメージを取り戻すためにも、徹底した調査を期待したい。

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