化学機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)の冤罪(えんざい)事件で、大川原化工機側は20日、保釈が認められずに病死した元顧問、相嶋静夫さん(享年72)の遺族が警察、検察の謝罪を受け入れる意向であることを明らかにした。これまでは直接の謝罪を拒否してきたが、警視庁と最高検が7日に検証結果を公表したことを受け、決めたという。
警視庁、東京地検それぞれの幹部が25日に遺族に直接謝罪する方向で調整している。
大川原正明社長(76)と島田順司元取締役(72)、相嶋さんの3人は2020年3月、噴霧乾燥器を不正輸出したとして外為法違反容疑で逮捕・起訴された。相嶋さんは勾留中にがんが発覚したが、保釈が認めらず、被告の立場のまま21年2月に死亡した。地検は初公判4日前の21年7月に起訴を取り消した。
警視庁公安部の逮捕や東京地検の起訴を違法とした東京高裁判決(25年5月)が確定し、警視庁の鎌田徹郎副総監と東京地検の森博英公安部長(当時)が6月、大川原社長と島田元取締役に直接謝罪した。一方、相嶋さんの遺族は検証が終わっていないことなどを理由に応じていなかった。
警視庁は検証報告書で、公安部の捜査指揮系統の機能不全によって、組織として捜査の基本に欠けるところがあったとした。最高検も消極証拠の確認が不十分だったまま起訴したことや、相嶋さんの保釈請求に反対を続けたことを反省点として挙げた。【五十嵐隆浩】
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