
神社や寺院でおなじみの獅子狛犬(ししこまいぬ)。
強面(こわもて)だけど時に愛嬌(あいきょう)のあるものもいて各地の像を訪ねて歩く「狛犬巡り」も人気となる一方で、一部が戦時中に戦意高揚や戦勝祈願を目的として造られた歴史は見過ごされがちだ。
それとは逆に「平和記念」の4文字が刻まれた像もある。
今も地域を見守る石獣たちはどのような願いを背負って彫られ、何を伝えようとしているのか。
足元に「平和記念」の文字
福島県石川町の赤羽地区に鎮座する赤羽八幡神社。参道の入り口に立つと、2体の堂々とした狛犬像がじっとこちらを見つめていた。
向かって右側が「阿(あ)」の形に口を開き、左側が「吽(うん)」の形に口を閉じた「阿吽一対」の像。吽像の方は子どもをあやして胸部にはふくらみもあるので、雌雄一対かつ家族を表した狛犬像なのかもしれない。
「優しい。この像は他の像と比べて、やっぱり表情が優しいね」
案内をしてくれた町の元助役で地元の獅子狛犬像を調査する吉田利昭さん(89)は、そう言って目を細める。
夏の日差しを浴びて陰影を濃くした阿像の足元には、「平和記念」の文字が深く彫り込まれていた。
日本では聖域を守るメジャーな神獣であり、神社や寺院の参道で姿を見かける獅子狛犬。その源流は古代オリエントのライオンの意匠までさかのぼると考えられ、国内では大陸から伝わってきた獅子が独自に変化した。
なお、現代の私たちは一対の獣像をひとくくりにして「狛犬」と呼んでしまうこともある。
しかし、よく見ると…
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