7月の参院選を巡り、自民党公認候補への投票の見返りにパチンコ店運営会社が従業員に報酬を約束したとされる買収事件で、公職選挙法違反(買収約束)の疑いで逮捕された「デルパラ」(東京都港区)社長の山本昌範容疑者(50)が社内の本部長2人を通じて、自民候補を「グループとして支持する」との方針を全国の現場の店長らに伝えたことが捜査関係者への取材で判明した。警視庁などの合同捜査本部は、山本社長と本部長2人の3人が票固めを主導したとみて調べる。
山本社長らが、パチンコ業界の組織内候補として比例代表に立候補した阿部恭久氏(66)への支持を自社のグループ内に呼びかけたとみられ、傘下の全31店舗の従業員ら250人以上が指示通りに投票したとみられる。
他に逮捕されたのは、営業本部長の湯浅一行(46)=千葉県市川市=と管理本部長の小西悌之(ともゆき)(44)=鳥取県米子市=の両容疑者ら幹部5人。
捜査本部によると、6容疑者は店長に指示し、1都6県にある17店舗の従業員ら60人に阿部氏への投票に対する報酬として、現金3000円または4000円を支払うと約束したとして逮捕された。
捜査関係者によると、山本社長は、デルパラグループとして阿部氏を応援するため、期日前投票を呼びかけるよう湯浅、小西の両本部長に指示した。
両本部長は7月2、3日、オンライン会議で全国の店長に対し、候補者名を記入した投票用紙の写真を従業員に撮影させるよう指示。店長に集約と報告をさせていたという。さらに投開票日の前後にも複数回の報告を求めていたとされる。
報酬の金額は山本社長と本部長の3人で決めたという。警察当局が捜査に着手したため、報酬の支払いは確認されていない。
店長らは、朝礼や夜間のシフトとの交代時の「夕礼」、無料通信アプリ「LINE(ライン)」のグループラインなどで従業員への指示を浸透させていたとされる。こうした周知方法は店長に任せられていたという。【山本康介、長屋美乃里】
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