/163 辻村深月 画 佐伯佳美

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 覚えてるかな?と思いながら話すと、山本が『はい。覚えています』と答えた。

『結城さんが間に入って、鹿島さんではなく、その看護師さんが辞められたんですよね』

「うん」

 山本が結城の名前まで覚えていて、軽く驚く。続けた。

「その時に――オレが庇(かば)った形になった職員、結局、結城さんが亡くなった後すぐ辞めたんだよ。その時は、なんだよ、恩知らずだなって思ってたんだけど、今回電話したら、自分が今働いてるところに聞いてくれてさ。で、そっちにも書類出して、面接した。――普通は、見た目で断ってくるとこも多いんだろうけど、そいつがよく言ってくれたみたいで」

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