
第2次トランプ米政権の強権的な政権運営が米国を権威主義的な方向に進ませていると危惧する声が上がっている。世界をリードしてきた米国の自由民主主義はどこまで脅かされているのか。権威主義体制に詳しい東島雅昌・東京大准教授(比較政治学)は、トランプ政権の手法が巧妙で「市民社会が気づかぬうちに民主主義が浸食され始めている」と警鐘を鳴らす。【聞き手・飯田憲】
権威主義体制といえば、かつて選挙を実施しない一党独裁の国が多かった。しかし、冷戦後は選挙を定期的に行う「選挙独裁制」と表現できる権威主義の国が増えている。ロシアなどが典型的な例だろう。選挙の実施は民主主義の証明ではないということだ。
その上で、現代の自由民主主義体制の二つの軸を確認したい。市民の政治的な権利が基盤にあり、為政者の権力が憲法などによって制約される「自由主義」。もう一つが、公正な選挙によって指導者が選ばれ、選挙の敗者もその結果を尊重する「民主主義」。この二つが失われると、権威主義体制が成立する。
そこに至るまでには四つの段階がある。
第1に政治の分極化。有権者が二つの党派に分かれ、激しい政治的対立が市民の行動にまで影響を及ぼす状態だ。第2で、有力なポピュリストの政治家が登場する。一方の党派を既得権益の擁護者として攻撃し、自らが国民の利益代弁者と主張して支持を集める。
第3は、ポピュリスト政権による権力基盤の強化だ。彼らは最初こそ選挙に強くないが、勝利すると権力を強化する。政権を担い、議会でも多数派となれば、裁判所や中央銀行、軍の人事に介入し、権力分立の原則を事実上骨抜きにする。
仕上げの第4は、選挙結果の操作だ。…
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