赤ちゃんの頭の匂いが人類の癒やしに? 大学発ベンチャーが香水発売

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写真はイメージ=ゲッティ

 神戸大発のベンチャー企業「センツフェス」が生まれたての赤ちゃんの頭から立ち上る「いい匂い」を香水として再現し、商品化した。

 匂いを嗅ぐと、赤ちゃんを抱いたときに湧き上がる優しい気持ちになれるという。そのメカニズムとは――。

生後6週間までの「いい匂い」

 商品名は「Poupon pure(プポンピュア)」。フローラルと果物系の匂いがバランス良く合わさった香りで、温かみや爽やかさが感じられるものの、主張し過ぎないのが特徴だ。

 プポンは、フランス語で「生まれたての赤ちゃん」を意味する。古今東西で「赤ちゃんっていい匂いがするね」と語られるが、生後6週間ほどでその匂いは変化してしまう。

 センツフェス代表の尾崎まみこ神戸大名誉教授(味覚嗅覚生理学)らがこの赤ちゃんの匂いを化学的に分析し、商品化にこぎ着けた。

「ずっと嗅いでいたい」

 尾崎名誉教授は学生時代から昆虫を研究し、特にアリの社会行動をつかさどるフェロモンの研究で業績を残してきた。

発売された「Poupon pure(プポンピュア)」=センツフェス提供 拡大
発売された「Poupon pure(プポンピュア)」=センツフェス提供

 だが、児童虐待事件が後を絶たないことに心を痛め、「言葉を持つ人間でも子育てはしんどい。言葉の代わりに匂いを使うアリたちから学んだことを人間社会に役立てたい」と一念発起。大学を定年退職した後の2023年にセンツフェスを設立し、子育てに追われる親たちの「癒やし」の開発を進めた。

 尾崎名誉教授はまず、育児中の母親は赤ちゃんの頭とおしりの匂いを嗅ぐことが多いとする論文からヒントを得て、新生児の頭部の匂いに着目した。

 次に、浜松医科大の医学部付属病院の医師や妊産婦から協力を得て生後間もない赤ちゃん約20人の頭部から匂いを採取し、分析器にかけて37の匂い成分を突き止めた。

 データを基に匂いを再現し、男女20人の学生や父母、祖父母、保育士に嗅いでもらったところ、脳内の特定領域の活動を経て「快い」「ずっと嗅いでいたい」といった気持ちにさせてくれることが明らかになった。

 嗅いでいて「心地よい」と感じる赤ちゃんの匂いの主要成分はノナナールというフローラルの香りがする化学物質だ。言葉を持たない赤ちゃんが、親たちに優しいコミュニケーションを促す手段として放出している可能性があるという。

 化学組成と製法については、国内だけでなく米国や欧州連合(EU)などで特許を取得した。

匂いは赤ちゃんのメッセージ?

 「『フェロモン』は同じ種の別の個体に何らかの行動や変化を促す化学物質の総称で、コミュニケーションツールの一つです。言葉を話せない赤ちゃんがこれを利用してもおかしくはないと思います」と尾崎名誉教授は語る。

尾崎まみこ神戸大名誉教授=本人提供 拡大
尾崎まみこ神戸大名誉教授=本人提供

 また、「自分の子育て経験からすると、生まれたての赤ちゃんは泣いてばかりで、親はイライラさせられるものです。でも、同時にいい匂いを出して『優しくしてね』というメッセージを発しているから、お世話ができるのだと思うんです。実験で分かったわけではありませんが、この香水が(現生人類の)ホモ・サピエンス全体に作用する『赤ちゃんの癒やしの匂い』ということになったら、どんなにいいでしょうね」と話している。

 商品は5ミリリットル入りで2970円(送料・税込み)。センツフェスの公式サイトから購入できる。【山崎明子】

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