
SBI新生銀行は31日、バブル経済崩壊後の不況を受けた金融危機時代に国から借りていた公的資金を完済した。前身の日本長期信用銀行(長銀)に投入されてから既に四半世紀以上。大手行最後の1行となる節目を迎えたが、なぜここまで時間がかかったのか。
「自分が現役の時代には完済はないだろうと思っていた」。長銀出身でSBI新生銀に在籍する50代社員は月末での完済に道筋を付けたことを受け、感慨深げに振り返った。
長銀は1952年、基幹産業に長期資金を安定的に供給するために設立され、高度成長期の産業振興を担った。だが、バブル崩壊で不良債権問題が深刻化。国が90年代後半以降、計10兆円を超える公的資金を都市銀行を中心に投入する中、名門とされた長銀は98年にあえなく破綻。一時国有化され、同年以降に計4000億円超の公的資金が投入された。
長銀はその後の2000年に新生銀として再出発。個人向け取引の強化や投資銀行業務などビジネスモデルの多角化を図り、04年に株式再上場を果たした。
株価が返済基準に達せず低迷
公的資金は高い配当を受け取れる優先株という形に転換され、償還期限付きで国が所有することになった。だが、期限内の政府の回収目標額に届かず、全額返済はかなわなかった。07年には優先株を普通株に転換して国が一時筆頭株主となり、株価が上がったタイミングで売却して公的資金を回収する方針となった。
しかし、リーマン・ショックもあって株価は低迷。消費者金融事業を買収したが収益は伸びず、08~09年度には最終(当期)赤字に陥るなど、経営は迷走した。一時は旧日本債券信用銀行が前身のあおぞら銀行との合併も検討されたが破談となり、その後も国が新生銀株を手放せないままでいた。
15年には公的資金が残っていたあおぞら銀やりそなホールディングス(HD)も返済を終え、大手行で完済していないのは新生銀だけとなった。ある金融庁OBは「最後までめどが付かなかった新生銀の完済は金融庁としても長年の課題だった」と振り返る。
なぜこれほど返済に時間がかかったのか。銀行経営に詳しい東洋大の野崎浩成教授(金融論)は、政府が回収目標とした5000億円という返済必要額の設定と、…
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