
一つの選挙が、政治の風景を大きく塗り替えることがあります。20日投開票された参院選はそんな選挙でした。
自民、公明両党は参院全体の過半数を維持できる改選50議席を下回り、衆院に続いて参院でも少数与党に転落。野党第1党の立憲民主党は議席を伸ばせず、代わりに国民民主党、参政党が躍進する結果となりました。
政治部デスクの佐藤慶記者が、今回の参院選が持つ意味と、今後の政治にもたらす影響や課題を考えました。
台風の目になった参政党
今回の選挙戦で「台風の目」となった参政の勢いをまざまざと見せつけられたのは、選挙戦序盤に各選挙区や比例代表の情勢を調べるため、毎日新聞が実施した特別世論調査の数字を目にしたときだった。
参政は比例の獲得議席を大きく伸ばす見通しとなっていたほか、選挙区でも改選数2以上の「複数区」の多くで当落線上に食い込んでいた。
全国各地に支部や地方議員を有し、交流サイト(SNS)を通じた積極的な発信で支持を集めていることはもちろん承知していたが、実際に世論調査の数字を目の当たりにすると驚きを禁じ得なかった。
社内会議でも、各選挙区の担当記者から「ここまで数字が出るとは考えにくい」など懐疑的な意見が出た。
だが、調査結果が示した勢いは本物で、参政は改選1議席から14議席と躍進した。
象徴的だったのが2人区の茨城だ。この選挙区は1998年以降、自民と旧民主系が2議席を分け合ってきた。今回は自民、立憲の現職に参政新人が挑む構図となったが、参政新人が立憲現職を僅差で破り、2位当選を果たした。
改選数4の大阪では参政新人が3位当選し、自民新人が当選圏からはじき出される結果となった。
参政の台頭など多党化が一気に進み、自民、立憲の与野党第1党の地位は揺らぎつつある。
日本はかつて、政治改革の理想型として「2大政党制」を志向した。旧民主党が2009年に政権交代を果たし、本格的な2大政党制が近づいたかのように見えたが、政権運営に「失敗」し、政権担当能力の欠如を露呈した。
12年に自民が政権を奪還し、再び政権交代が起きたが、第2次安倍晋三政権下で旧民主党勢力は離合集散を繰り返し、「1強多弱」と呼ばれる政治構造が続いた。
弱体化自民 復活見通し立たず
だが、「1強多弱」は昨年の衆院選での与党過半数割れで崩壊した。そして自民がさらに弱体化し、多党化の色をより強くしたのが今回の参院選だったと言える。
背景には「国民政党」を掲げる自民が、国民の利益をくみ取り、反映させることができなくなっている深刻な現状がある。派閥裏金事件をはじめとする「政治とカネ」問題によって国民の信頼は失墜。真相解明や再発防止のための法整備は不十分で、「信なくば立たず」の戒めが響いているようには見えない。
また、物価高のなか、政権は賃上げの成果を強調したが、恩恵を受けられていない層も多く、その不満が新興政党に流れたとの指摘もある。
参院で自公が過半数を失った影響は大きい。
自公政権が続くと仮定した場合…
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