奈良市の国内最大の円墳、富雄丸山古墳(4世紀後半、直径109メートル)に副葬された中国・前漢の「虺龍文鏡(きりゅうもんきょう)」と同タイプの青銅鏡が、姉妹都市のウズベキスタン・サマルカンド市からも出土していることが分かった。この奇跡を親善に生かすため、奈良市は2027年夏に奈良国立博物館で開催予定の「奈良・サマルカンド特別交流展」で2鏡を展示する。31日発表した。
虺龍文鏡は紀元前1世紀末~後1世紀初めに前漢で作られた直径19・1センチの大型鏡。23年度の富雄丸山古墳発掘調査で、3世紀中ごろに魏で作られた「三角縁神獣鏡(さんかくぶちしんじゅうきょう)」、2世紀末~3世紀前半に後漢で作られた「画像鏡」と計3枚で見つかった。虺龍文は蛇や龍をデザイン化した文様。弥生時代の福岡・平原1号墓から出土した虺龍文鏡は国宝に指定されている。
サマルカンド市はシルクロードのオアシス都市。一方で国際都市・平城京があった奈良市は「シルクロードの終着点」と呼ばれている。このシルクロードが取り持つ縁から両市は22年10月、姉妹都市提携を結んだ。サマルカンド市の虺龍文鏡は、市郊外コクテパ地区の墳墓(紀元前1世紀)から出土した。直径18・7センチ。前漢からシルクロードで運ばれ、有力者の墓に副葬されたらしい。
奈良市とサマルカンド市は姉妹都市締結5周年となる27年に奈良市内での交流展を企画し、展示品を検討していた。県立橿原考古学研究所の分析で25年7月、富雄丸山古墳出土鏡の1枚がサマルカンド市ゆかりの品と分かり、急きょ2青銅鏡を展示品にすることにした。他の展示品は未定。
奈良市観光戦略課の担当者は「姉妹都市ゆかりの鏡が、奈良市の古墳で見つかるとは奇跡としかいいようがない。シルクロード東西交流の証拠となるこの奇跡を生かして、両市の絆を深めていきたい」と話している。
27年夏に開催する同特別交流展の問い合わせは奈良市観光戦略課(0742・34・4739)へ。【皆木成実】
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