子どもも見た目にこだわる時代なのか。メークの低年齢化が進み、夏休みはメークを楽しむ絶好の機会と考える小中学生が増えている。
ただ、化粧品は成人を対象に販売されているものがほとんどで、子どもの肌を傷めるリスクがある。また、交流サイト(SNS)の影響で外見を気にする傾向が強まっていることも背景にあるようだ。
保護者は子どものメークとどう向き合えばいいのだろうか。
「かわいくなりたい」
<夏休み中でメーク練習したいんだけどまじ誰か教えて>
<初めてのメークで何を買えばいいのか分かりません。どんな化粧品がおすすめですか>
子ども向けサイト「ニフティキッズ」やX(ツイッター)には、子どもたちの声が続々と投稿されている。
小学生か中学生かを問わず、「あか抜けるため」「可愛くなるため」にメークをしたいと考える女の子が多い印象だ。
理由として、「好きな人がいるから」「友達や家族にデブと言われたから」と書き込んでいる子どもたちもいる。
メーク開始「小学生から」が最多
「ニフティキッズ」を運営するニフティは7月、子どものコスメに関するアンケート調査結果を公表した。4~5月、同サイト訪問者を対象に実施し、小中学生を中心に1896件の有効回答が寄せられた。
性別は女子90%、男子3%、選択なしが7%だった。
調査結果によると、「メークをすることがある」と回答した子どもは全体で64.2%に達した。年代別では小学生67.8%、中学生58.8%だった。
メークをすると回答した子どもにメークを始めた年齢について尋ねると、小学校高学年(5~6年生)が最も多く、35.6%だった。
続いて、小学校中学年(3~4年生)30.8%▽小学校低学年(1~2年生)9.7%――の順に多く、メークをする子どもの76.1%が小学生のうちに化粧を始めていることが分かった。
きっかけについては、半数が「ユーチューブなどでメーク動画を見て」と回答。「友達の影響」「自信を持ちたくて」を挙げた割合もそれぞれ3割にのぼる。
休日にメーク 大人の商品使う子も
また、いつメークをしているかという問いには、「休みの日」と回答した割合が小中学生ともに93%を超えており、▽「放課後」32.9%▽「学校にしていく」28.8%――を大きく引き離した。
子どもたちはどんな化粧品を使っているのか。
調査によると、低価格帯の「プチプラ」化粧品から、「デパコス」と呼ばれる百貨店が取り扱うようなブランド品まで幅広く人気があった。中には、シャネルやディオールといった高級ブランドを愛用品として挙げる子どももいた。
メーク低年齢化 SNSの影響?
しかし、化粧品を子どもが使うデメリットはないのだろうか。
「子どもは基本的にメークをする必要がありません。それどころか、リスクもあります」
警鐘を鳴らすのは、美容外科の診療経験もある美容皮膚科「リゼクリニック」の赤岩優妃医師だ。
「ユーチューブやインスタグラムで同世代のライフスタイルが可視化されるからか、自分もお化粧をしたいと思う年齢が早くなっていると感じます」
しかし化粧品は本来成人向けにつくられており、年齢制限や推奨年齢は書かれていない。
スキンケア商品も含めて、アルコール、香料、美白成分や鎮静成分などが含まれている。
ウオータープルーフ処方の化粧品も通常の洗顔で落ちにくい場合がある。また、鮮やかな発色と落ちにくさが売りの「ティント」と呼ばれる化粧品は色素沈着を起こす可能性がある。
「子どもの肌は大人より薄くて柔らかく、敏感です。修復も早い分、ダメージを負いやすい。子ども向けのキッズコスメなど、低刺激のものを使用することをおすすめします」
医師「子どもの自己流メークは危険」
メークの動画を見よう見まねで試したり、自己流でメークしたりするのも危険だ。
「二重や大きな目に憧れてアイメークをする子どもは多いですが、目の周りは最も皮膚が薄い場所です。幼いころから二重にするノリを使って、高校生になるころにはまぶたがボロボロに傷んでいたり皮膚が伸びきってしまったりしているケースもありました。つけまつげ用の接着剤やアイシャドー、アイライナーも刺激が強く、個人的にはあまり使わない方が良いと思っています」
親子でメークのルールを決めよう
赤岩さんは、キッズコスメであっても、親子間で事前にルールを決めておくことを勧めている。
化粧品を買う際には親と一緒に選ぶ▽メークを楽しむ日は親と一緒にいる日に限定する▽メークをした日はクレンジング剤を使用し、化粧成分や洗浄成分がきちんと落ちているかを親子で確認する▽肌にトラブルが起きた場合はすぐ親に相談し、小児科や皮膚科を受診する――などだ。
また、メークをしたいという子どもの気持ちの背景を思いやる必要もあるのでは、と赤岩さんは指摘する。
「子どもは大人よりも周囲の意見を真に受けやすく、SNSの影響も相まって、外見を気にする子どもが多くなっているのかもしれません。子どもたちと話すときは、必ずしもメークした方がかわいいわけではなく、すっぴんの方が自分らしいと思う子もいるんだよ、その選択肢もあるんだよ、ということを伝えています」
逆に、メークをした方が堂々として自分らしくいられると思うなら、その気持ちを尊重してあげたい、とも話す。
「メークは自分らしくいるためのツールです。禁止したとしても、子どもは親に内緒でやってしまう場合もあります。できるだけ安全なツールを選んでほしい。将来の肌のためにちゃんと大人に相談して正しい方法で使おうね、と伝えることが大切ではないでしょうか」【山本萌】
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