
「ホーホケキョッ」
初春のウグイスが甲高く鳴いている。
わけではなく、動物ものまね芸の五代目江戸家猫八さんによるものまねだ。
思わず本物かと聞き間違うほどの再現度の高さに驚かされる。
代々続く伝統の芸を磨く猫八さん。動物に対する畏敬(いけい)の念を胸に、芸を通じて挑んでいることがある。
四代目の願い、ウグイスだけは……
江戸家の歴史は長い。明治時代、猫八さんの曽祖父にあたる初代江戸家猫八(1868~1932年)が歌舞伎役者やあめ売りを経て、寄席演芸の世界に入り、動物ものまね芸で人気を博した。
初代の息子が三代目猫八を継ぎ、四代目猫八、そして現在の猫八さんまで、父から子へと芸をつないできた。
猫八さんは父の背中を見る中で芸への憧れを抱いていった。特にお家芸のウグイスには思い出がある。
幼い頃、四代目と一緒に風呂に入っていた時のことだ。猫八さんが指を口にくわえてウグイスの鳴きまねをしていると、横で見ていた四代目が猫八さんの小指をぐっとかんでウグイスの鳴き声を出してくれた。
「こんなに強くかむんだっていうことをよく覚えていますね。今でもあの時の(父の)歯の当たり方の感覚が残っている。あとは自分の指から音が出た喜び。子どもながらにやっぱりすごくうれしかったです」
だが、18歳の時に難病「ネフローゼ症候群」を患い、病に倒れる。再発を繰り返し、闘病生活を送る中で、四代目が猫八さんに頼んだことがある。
「もし跡を継げなくて…
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