センバツでゼロだった「エースで4番」、開幕試合に登場 夏の甲子園

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【小松大谷-創成館】一回表小松大谷2死三塁、適時打を放ち喜ぶ江守=阪神甲子園球場で2025年8月5日、玉城達郎撮影 拡大
【小松大谷-創成館】一回表小松大谷2死三塁、適時打を放ち喜ぶ江守=阪神甲子園球場で2025年8月5日、玉城達郎撮影

 高校野球の花形「エースで4番」は今春のセンバツ大会はゼロだったが、今夏の甲子園大会では5日の開幕試合から登場した。来春のセンバツ大会からは指名打者(DH)制が採用されるため、今後は投打の分業が加速しそうだが、DH制導入前最後の甲子園大会ではどんな活躍を見せるだろうか。

 「4番、ピッチャー、江守くん」

 ナイター開催となった開幕試合の創成館(長崎)―小松大谷(石川)では、小松大谷のエース左腕・江守敦士(3年)が「4番・投手」として先発メンバーに名を連ねた。

 甲子園練習では「しっかり体のケアをしていれば、どちらもできると思う。責任感もあるが、楽しみの方が大きい」と自信を示していた。

 投手では完投、打者では1試合3安打以上が目標だ。スラッガーの「3番・三塁」の田西(たさい)称(とな)(3年)が勝負を避けられるケースも想定され、役割は大きい。「チャンスで一本打ちたい」と力を込める。

横浜の奥村頼人=横浜スタジアムで2025年7月27日、高橋広之撮影 拡大
横浜の奥村頼人=横浜スタジアムで2025年7月27日、高橋広之撮影

1970年以降初のゼロ

 今春のセンバツ大会では投手を下位打線で起用するチームが目立った。優勝した横浜(神奈川)のエース左腕・奥村頼人(3年)は「4番・右翼」または左翼で出場し、途中で救援でマウンドに上がったが、先発登板はなかった。

 春夏の甲子園大会で「4番・投手」の先発出場がゼロだったのは、1970年以降では初めてのことだった。

1978年の夏の甲子園で「4番・投手」で活躍したPL学園の西田真次=阪神甲子園球場で 拡大
1978年の夏の甲子園で「4番・投手」で活躍したPL学園の西田真次=阪神甲子園球場で

 夏の甲子園大会で、大会中に1試合でも「4番・投手」で先発出場した選手の人数は70年以降では73年と78年が最多の10人。78年はPL学園(大阪)の西田真次(後に真二)、南陽工(山口)の津田恒美(後に恒実)らが該当する。83年は池田(徳島)の水野雄仁ら8人。2004年は千葉経大付の松本啓二朗ら9人だったが、05年以降は多くて6人で、06、19年は1人だった。

1983年夏の甲子園で「4番・投手」として活躍した池田の水野雄仁=阪神甲子園球場で 拡大
1983年夏の甲子園で「4番・投手」として活躍した池田の水野雄仁=阪神甲子園球場で

 少なくなってきた要因は、2番に強打者を置くなど打順における価値観の変化に加え、選手たちの気質の変化を挙げる指導者もいる。

 いわゆる「お山の大将」的なキャラクターが減り、「ダブルキャプテン制」のように責任を一人に背負わせないチーム作りを目指す高校も増えた。

 さらに、投手には「1週間500球以内」とする投球数制限が導入されるなど、健康管理対策が進む時代背景もある。日本高校野球連盟のDH制採用には投手の負担軽減を図る狙いもある。高校野球で投打の分業が進む現状を象徴していると言える。

未来富山の江藤蓮=阪神甲子園球場で2025年8月1日、吉川雄飛撮影 拡大
未来富山の江藤蓮=阪神甲子園球場で2025年8月1日、吉川雄飛撮影

負担よりも「楽しさ」

 今夏の出場校には投手を8番や9番で起用するチームが多い一方、「4番・投手」は存在する。地方大会決勝では江守に加え、未来富山の江藤蓮(3年)、尽誠学園(香川)の広瀬賢汰(3年)、青藍泰斗(栃木)の永井竣也(3年)の3人が「4番・投手」で先発した。

 尽誠学園の広瀬は主将の重責も兼務する。西村太監督は「春は広瀬の6番も試したが、チームが不安定だった。大黒柱を4番に固めたことで土台ができた」と話す。

 期待に応えた広瀬は香川大会で全5試合に登板し、準々決勝の高松商戦で無四球完封するなど、最速143キロの直球を軸に計33回を5失点に抑えた。

 打っては打率3割7分5厘をマークしてチームを9年ぶりの夏の甲子園に導いた。広瀬は「チームを見ながら投手と打撃の練習をするのでしんどいことも多いけど、それ以上にチームが勝つ楽しさがあるので頑張れている」と大役を全うする。

青藍泰斗の永井竣也=阪神甲子園球場で2025年8月2日、皆川真仁撮影 拡大
青藍泰斗の永井竣也=阪神甲子園球場で2025年8月2日、皆川真仁撮影

 35年ぶり出場の青藍泰斗は左腕エースの永井を4番に据える。栃木大会では打率3割3分3厘を残しつつ、作新学院との決勝では延長十回まで一人で投げ抜き、歓喜をもたらした。「信頼されて4番を打たせてもらっているので期待に応えたい。みんなもカバーしてくれるので自信を持って投げたい」と意気込む。

 春夏初出場の未来富山の江藤は最速145キロを誇り、18歳以下日本代表候補にも選ばれたプロ注目左腕。富山大会では快速球を武器にイニング数を大きく上回る三振を奪い、4番としては打率4割5分5厘、2本塁打を放つ大車輪の活躍だった。「自分が抑えて、打って、チームの柱として甲子園でも躍動できれば」と誓う。

 春に続いてエースナンバーを背負う横浜の奥村は神奈川大会で3本塁打を放つなど、4番として非凡な打力を見せた一方で、投球回は計6回3分の1にとどまった。

 打撃では春から体重を4キロ増やしたことで飛距離が増し、「体を作ったら低反発バットでも関係なく、しっかりホームランは出る」と自信を見せる。村田浩明監督からは「甲子園では投手も(多く)やるぞ」と伝えられたといい、「投手として甲子園に来た感じ。可能性がある限りは両方とも伸ばしたい」と投打での躍動を期す。

 来春のセンバツ大会からはDH制が導入されるため、投手を打席に立たせず、投球に集中させることを選ぶチームも出てくるだろう。大きな変化を目前に控える中で「エースで4番」の「二刀流」球児の奮闘が注目される。【皆川真仁、長宗拓弥、村上正、石川裕士】

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