
1945年8月の広島、長崎への原爆投下から80年。第二次世界大戦後、核兵器の実戦使用は辛うじて回避されてきた。
しかし、被爆者が願う核廃絶への道のりは遠いばかりか、ロシアが核兵器を威嚇の手段として使うなど「核のタブー」は壊れつつある。核使用のリスクが高まる世界に、私たちはどう向き合えばいいのか。
被爆地で研究を続けてきた川野徳幸・広島大平和センター教授に聞いた。【聞き手・日向米華】
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ロシアによるウクライナ侵攻が起きた後、広島市の松井一実市長は8月6日の平和宣言などで「核抑止論は破綻している」と指摘してきました。
市長に真意を聞いたところ、こういうことでした。
核抑止は、核保有国の為政者が理性的で合理的な判断ができるという前提で成り立っています。核兵器は実際に使ってはならない兵器で、抑止論があるが故に防衛目的の役割を果たしています。
しかし、ロシアによるウクライナ侵攻で、核兵器使用の威嚇が幾度となく繰り返されたように、理性的かつ合理的な対応ができない為政者も存在します。核兵器が使われかねない状況が起きている以上、理論なるものは破綻している。私もそう思います。
学生の認識
一方で、ロシアのプーチン大統領は理性的かつ合理的な判断に基づいて核兵器使用をちらつかせているという可能性もあります。
なので、核抑止論というのは、何に対して、誰に対して、効いたのか効いていないのか、よく分からない部分があります。その判断は大変難しい。
学生はどう考えているか。
2024~25年に広島大平和センターが実施した学生平和意識調査では、…
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