高校野球・夏の甲子園1回戦(6日)
○開星(島根)6―5宮崎商●
タイブレークの延長十回にもつれ込み、「タイムリミット」が迫っていた。相手の攻撃を無失点でしのぎ、その裏、点が入らなければ翌日以降に再開される継続試合になる。無死満塁となって打席に入った開星の副主将・前田翔太は「自分で決めるつもりだった」。
4球目を芯で捉えると、中堅への飛球はサヨナラの犠飛となり、三塁走者の生還を見届け喜んだ。
最も暑い時間を避けて朝と夕方に分けて開催する2部制は、第2試合は午後1時半から新たなイニングに入らず、同45分を過ぎれば回の途中でも一旦打ち切られ、継続試合となる。
九回の左翼守備から出場していた前田は「試合が一度止まると、(再開後に流れが)どっちに転ぶのか分からない」と、十回表の守備時から打席に備え、気を引き締めていた。
継続試合となれば、緊張感の保ち方やコンディション維持などが難しくなる。大谷弘一郎・野球部長は「初戦ですごく緊張していてかなり疲労していたので、次の試合まで1週間空くのとでは大きく変わってくる。とにかく難しいと思っていました」と語る。
だが選手たちには落ち着きがあった。主将の藤江来斗は「試合の3日ぐらい前から継続試合になるよと言っていた。最初から覚悟させておくことが大事かなと思っていたので、(継続試合でも)別になんとも思っていなかった」と話した。
チームのモットーは「ベンチとスタメンが一体となること」。前田だけでなく、八回に脚がつった選手に代わって緊急出場し、適時打を放った三島将ら、誰がいつ出ても勝てるよう準備を欠かさない。総力戦でつかんだ甲子園での14年ぶりの勝利に、今大会最年長73歳の野々村直通監督は「素晴らしいと思う。このチームは粘り強い魂のあるチーム。甲子園でそうした試合ができて本当にうれしい」と目を細めた。【高橋広之】
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