
あれから2年が過ぎても、ネットには自分を中傷するような動画があふれている。
「老害議員に石丸市長ブチギレ」「石丸市長 議員の知識のなさにあきれ果てる」「圧倒的市長を前にグダグダする議員」
いずれも、広島県安芸高田市議会の公式配信を短く編集した「切り抜き動画」だ。
その数、400本超。ほとんどが市長だった石丸伸二氏を礼賛する内容で、市議である自分が「敵役」に仕立てられている。
「もうユーチューブは一切見ない。バカにされ、笑いものにされて。いつまで続くのでしょうか」
こうした動画が大量にアップされるようになったのは、2023年8月からだ。
その直前、石丸氏は一つの投稿をした。それは、切り抜き動画の投稿を呼びかけるような内容だった。
「次は自分だ」
三菱UFJ銀行の行員だった石丸氏は20年8月、前市長の辞職に伴う市長選で当選した。しかし、市政運営を巡ってすぐに議会と対立する。
この市議も、婚活事業や住民アンケートなどを巡って一般質問で市長を厳しく追及し、ときに激しい言葉でやりあった。
気付くと「反石丸」の代表のような立場になっていた。
しばらく大きな変化はなかったが、23年7月に状況が変わる。
市の定例記者会見で、地元紙である中国新聞の記者と石丸氏との「バトル」が交流サイト(SNS)で話題を呼んだのだ。
市が配信した会見動画は驚異的な再生回数となり、それらを編集した切り抜き動画も多くアップされた。
内容は石丸氏の対応を絶賛し、記者を罵倒するものが大半を占めた。
そんな状況のなか、石丸氏は8月21日、X(ツイッター)でこんな投稿をする。
「定例記者会見のまとめ動画が盛り上がっているのですが、あのやり取りは割と平常運転です。記者会見以外に議会の一般質問も同じ調子で行っています。どなたか上手(うま)く纏(まと)めて頂ければ幸いです。ちなみに、いつも再生数が多いのは××××議員です(原文は実名)」
この投稿は98万回以上も閲覧された。自分の名前が書かれたことを知った市議は、投稿が意味することをすぐに理解する。
これまで切り抜き動画の標的となっていたのは、中国新聞の記者だった。次にやられるのは、自分だ――。
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