<文化の森 Bunka no mori>
「言論の自由守る」外地の出版物が示す信念
戦時下の混乱で失われ、作家自身も手に取ることを切望した“幻”の単行本が見つかった。『二十四の瞳』などの反戦文学で知られる作家、壺井栄(1899~1967年)が太平洋戦争末期に中国で刊行した短編集『絣(かすり)の着物』。何気ない日常をまっすぐなまなざしで写し取った物語に銃後の悲しみがにじむ。専門家は、言論統制下の「精いっぱいの抵抗」が刻まれた作品集と評価する。
壺井は香川県の小豆島に生まれ、30代後半で本格的に作家活動を始めた。プロレタリア文学の影響を受けつつ、庶民の姿を描いた小説を多く発表した。
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