
京都大は7日、京都の伝統絹織物「西陣織」の技法を取り入れた次世代の宇宙服を、西陣織メーカーや宇宙ベンチャーなどと共同開発すると発表した。日本の伝統技術を宇宙分野に生かそうとする取り組みで、10年以内の実用化を目指すとしている。試作品は既に完成しており、10日から大阪・関西万博で展示される。
新たに開発するのは、宇宙飛行士が船外活動で着用するもの。過酷な環境から身を守るために高い気密性や強度、耐熱性などが必要とされる。複数の素材の層を重ね合わせて作られ、製作には高度な技術が求められることから、これまで民間の新規参入が難しかった。
共同開発に取り組む京都大と岐阜医療科学大、宇宙ベンチャー「アマテラススペース」(東京都)は、西陣織が柔軟性と強度を兼ね備えていることに着目。高強度繊維を使用し、西陣織メーカーの「タイヨウネクタイ」(京都市)の技法で宇宙服のアウター層を織る。

意匠は「メイドインジャパン」を意識。太陽光を十分に反射できる黄色の生地に、クジャクの羽を模したデザインをほどこした。宇宙服を「未来の民族衣装」と位置づけ、日本文化を世界に発信する狙いもある。
また従来の宇宙服は内部が約0・3気圧に保たれており、着用してから数時間かけて体を慣らす準備作業が必要だった。このためチームは与圧を0・65気圧まで高め、より人体に優しく簡単に着られる次世代型のモデルを目指すとしている。
京都大有人宇宙学研究センター長の山敷庸亮教授は「伝統工芸で培われてきた技術は宇宙に転用できる力を持っている。活発化する宇宙ビジネスで日本のプレゼンスを発揮していきたい」と話した。【田中韻】
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