
あの夏の悲劇は本人にも、高校野球ファンの記憶にも深く刻まれている。2023年7月、甲子園出場を懸けた横浜―慶応による神奈川大会決勝。終盤のワンプレーを巡る判定は、SNS(交流サイト)上などで論争となった。その当事者、横浜の主将で遊撃手だった緒方漣選手(20)は今、強豪集う東都大学リーグの国学院大で活躍している。2年の月日が流れた今、何を思うのか。【聞き手・長宗拓弥】
<2年前の横浜の主将で、現在は国学院大でプレーする緒方漣選手のインタビューを2回に分けて届けます>
・後輩、恩師へ「横高」への思い
・「踏み忘れ」で消えた甲子園、あの夏を語る
歯を磨くくらい…
――2年前の夏、あと一歩で甲子園出場を逃しました。結果的に緒方選手のプレーが勝負の分かれ目となりました。
◆今も一番、心に残っています。試合後、村田(浩明)監督に「あの試合があったから、今の自分があると思えるように未来を変えていくしかないぞ」と言われました。今も悔しい気持ちを持ち続け、プレーしています。だから、いろんな失敗をしても、前に進めているんだと思います。
――横浜の2点リードで迎えた九回表無死一塁の守備。打球は二塁へ転がり、「4―6―3」の併殺を狙った遊撃手の緒方選手の足が二塁ベースを踏み損ねたと判定されました。オールセーフとなり、ピンチが広がりました。
◆何が起きたのか分かりませんでした。塁審からアウトのジャッジがなく、頭が真っ白になりました。村田監督がベンチから選手を出し、ジャッジの確認をしていたと思います。
自分は全然、心の整理ができなくて、その場で立ち尽くしているような感じだったと思います。当時の景色はぼんやりとしか記憶には残っていないんです。
――二塁ベースに触れた感触はありましたか?
◆自分の中では普通のプレーだったんです。歯を磨くくらい、当たり前に繰り返してきたプレーでした。今まで、そうしたジャッジもされたことはなかっ…
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