農業を始めたい。学びたい。でも、何から手をつければいいのやら? そんな事を考えていると、いい答えが見つかった。「まいばら農業塾」だ。ゼロから新規就農までの間にある高い壁、そこを解消しましょうと、2年前に滋賀県米原市が始めた。令和のコメ騒動、地球温暖化、スマート農業……。近ごろ、農業への関心が高まっている。塾もすこぶる人気だ。ずぶの素人の記者(私)は、今夏、その門をたたいた。農業、教えてくださ~い。
【長谷川隆広】
まいばら農業塾は2023年夏に始まった。当時の担当者が「市内の農産物直売所から米原産が減っている」と、危機感を持ったことがきっかけだそうだ。今年で3回目。8月から来年1月まで土曜日のみ月1、2回、座学や実習がある。受講料は破格の5000円。初心者向けとはいえ、作付けから販売まで内容は幅広い。市は移住施策との連携も図っており、ターゲットは若者や移住者、定年帰農者といった人たち。50代半ば、定年が近づく私もターゲットの隅っこに入っている、と思う。
以前から気になっていた。日ごろ口にする農作物がどのようにして作られ、どのようにして届けられているのか。実体験として知りたいな、と思っていた。できれば自分の手で安全な農作物を作りたいとも。取材でもらった塾生募集のチラシには「農業経験不問 無理なく始める農業の入口」とある。経験不問! 無理なく! うたい文句に背中を押され、迷わず応募。定員16人、応募者は40人だ。抽選、果たして……。市からの連絡は「当選」。新しい世界が開けてわくわくする。
実は4年前、故郷の大阪から家族で湖北に「移住(転勤)」した。ここで暮らしていると、生活の中に農業が深く根ざしていると感じる。象徴的なエピソードを一つ。6月の備蓄米発売日、すごい行列だろうと米原市内のスーパーへ。拍子抜けした。あれ、えっ、並んでいるのは10人だけ? おまけにそのうちの1人は私の妻だ。大阪では1000人以上並んだ店もあったというのに。兼業の市職員は「コメ? 買ったことないなー」。コメは自分で作る、親戚の農家に分けてもらう……。地域と農業との密接な関わりを改めて思い知らされた。同時に、この地に身を置きながら農業と関わらない手はないなとも思う。
さて、開講日も迫り、先輩たち(1、2期生)の「その後」が気になる。市に聞くと、農業塾の次の段階として、ほぼ同じ場所でステップアップほ場を借りることができる。卒業生のうち半数以上の18人がそこで農業を続けている。中には道の駅などに出荷している人もおり、市も手応えを感じているそうだ。
塾は米原市世継の農園で開かれる。受講期間中、塾生それぞれに約20平方メートルの農地が割り当てられる。我々3期生が開講を待つ間にも、スタッフは準備に奔走。農地を貸してくれる農業法人「親和」会長の北村進一塾長、栽培アドバイザーの常喜弘充さん、市農政課の職員。「塾生に最高の土壌を」と、太陽熱と微生物の働きを利用して農地を殺菌してくれているのだ。炎天下の作業で、体調を崩す職員もいたとか。お世話になります。さあ、ますます開講が楽しみになってきた。
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