ロシアのウクライナ侵攻を巡って15日開かれた米露首脳会談を受け、欧州各国は16日、停戦後のウクライナの「安全の保証」を改めて要求した。停戦に向けた交渉がロシアに有利な形で進むことを懸念し、対露圧力を続けることの重要さを強調した。
フランス大統領府によると、トランプ米大統領は米露会談後、ウクライナのゼレンスキー大統領、マクロン仏大統領、メルツ独首相、スターマー英首相、メローニ伊首相、北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長らと電話協議し、プーチン露大統領との会談の結果を説明。今後の対応について協議した。
マクロン氏は電話協議後にX(ツイッター)への投稿で、欧州のウクライナ支援国の方針について説明した。各国は、ウクライナの権利を尊重する形で持続的な平和が確立するまで、ロシアに圧力をかけ続けることが不可欠だとの認識で一致。ウクライナが停戦後にロシアの再侵攻を受けないための「安全の保証」に関して、トランプ氏が貢献する用意があるとしていることを歓迎し、米国と協力して具体的な進展を図るとした。
欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長もXへの投稿で「ウクライナや欧州の安全保障上の利益を守る強固な安全の保証が必要だ」と注文をつけた。
今回の米露会談が、欧州の意に沿う形で進められたかどうかは不透明だ。プーチン氏は会談後、欧州各国を念頭に「(和平の)進展を妨げようとしないことを望む」と述べており、米露間の協議内容と欧州の主張に隔たりがある可能性もある。
欧州側は米露会談を前に、露側への圧力を継続するようトランプ氏に求めていた。だが、停戦に応じなければ発動するとしていた対露制裁強化案は事実上、棚上げとなっており、欧州各国にとって不満の募る交渉経過となっている。
またプーチン氏はトランプ氏との会談後も「紛争の根本原因がすべて取り除かれなければならない」と従来の主張を繰り返している。「根本原因」にはNATOの東方拡大への懸念が含まれるとみられる。ロシアは、停戦後のウクライナの安全確保にNATOが関与することに難色を示している可能性がある。
トランプ氏の交渉姿勢も不安材料だ。当初のロシア寄りの姿勢から、最近は停戦に消極的なプーチン氏にいらだちを示す場面が目立っていた。だが今回の会談を契機に、トランプ氏が再び態度を軟化させることを欧州各国は懸念している。
欧州のウクライナ支援国は当面、米露やウクライナの交渉の推移を注視しながら、英仏を中心に結束を固める方針だ。米国には対露圧力の維持を求めながら、ウクライナへの軍事支援、停戦後のウクライナへの平和維持部隊の派遣の検討、NATOの防衛力強化などを急ぐとみられる。【ブリュッセル宮川裕章】
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