
ニホンウナギの完全養殖に向け、近畿大水産研究所と食品添加物などを製造する「三栄源エフ・エフ・アイ」の研究チームは、シラスウナギになる前の仔魚(しぎょ)用に、鶏卵を使わない新たなエサを開発した。鳥インフルエンザなどによる鶏卵の価格高騰のリスクを避けられ、安定供給への貢献が期待されている。
養殖ウナギは、天然のシラスウナギを捕獲して育てているが、近年はその漁獲量が減少している。完全養殖は、卵から育てたウナギの卵と精子を使って2世代目を人工ふ化させる技術で、近畿大は2023年に成功している。ただ、完全養殖において仔魚の飼育が最も難しいとされ、この時期に与えるエサが生存率や成長速度を大きく左右する。
仔魚の飼育に用いるエサは、たんぱく質や脂質が水中で分離したり溶け出したりしないよう、粘度がある状態を維持する必要がある。このため、現在は鶏卵黄を用いたエサが広く使われているが、近年は鳥インフルエンザなどの影響で鶏卵の供給が不安定になり、価格の高騰が続いている。

そこで研究チームは21年4月から鶏卵黄を用いないエサの開発を開始。鶏卵黄を増粘剤に置き換えたところ、24年5月にシラスウナギの生産に成功した。エサの改良を重ね、25年5月末までには100匹以上のシラスウナギを生産。粘度を調整することもでき、成長に合わせたエサを与えることも可能だ。
研究チームは「シラスウナギの生産には長い期間と多大な労力、光熱費が必要。今後、より安定して高い生存率で仔魚を飼育し、短期間でシラスウナギへ成長できるエサの開発を目指したい」としている。【中村園子】
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