2022~24年に自殺した妊産婦は計162人に上り、50歳未満の女性自殺者(計8804人)の約2%を占めたことが、厚生労働相指定法人「いのち支える自殺対策推進センター(JSCP)」と日本産婦人科医会のまとめで分かった。
特に、妊娠中は20代前半、産後は40代前半でリスクが高く、その他の年代も含めてJSCPが対策を呼び掛けている。
「産後3カ月~1年」最も多く
警察庁は死因が自殺と判断された人の年齢、性別、職業、推測される原因・動機などを集計した自殺統計をまとめており、22年1月からは妊娠中か産後1年以内の女性自殺者の状況も記録するようになった。
妊産婦の自殺を防ぐ基礎資料にしようと、JSCPと日本産婦人科医会はこのデータを分析した。それによると、妊娠中または産後1年以内に自殺した女性は22~24年の3年間に162人いた。内訳は、「妊娠中」45人(28%)▽「産後2カ月以内」26人(16%)▽「産後3カ月~1年」91人(56%)――だった。
妊娠中の自殺死亡率(出生数10万人当たりの自殺者数)は20~24歳が7・5と突出し、2番目に高い40~44歳の3・6と大きな差が見られた。その他は、25~29歳が2・1▽35~39歳が1・5▽30~34歳が1・0――となった。
また、産後1年以内の自殺死亡率は40~44歳が13・0と、2番目に高い35~39歳の6・6を大きく上回った。3番目以降は、20~24歳が6・1▽30~34歳が4・1▽25~29歳が3・3――と続いた。
JSCPの清水康之代表理事は妊娠中の20代前半と産後の40代前半を「ハイリスクグループと捉えるべきだ」と指摘する。
原因・動機は……
また、妊娠中の自殺の原因・動機(複数計上可)を分析したところ、「配偶者あり」は「家庭問題」、「配偶者なし」は「交際問題」がともに67%で最も多かった。
産後1年以内の自殺者の87%は「配偶者あり」で、そのうちの原因・動機はやはり「家庭問題」が76%で最多となった。一方で、13%の「配偶者なし」の原因・動機は「健康問題」(60%)が最も多く、妊娠中とは異なる傾向が見られた。
産後1年以内の原因・動機の「家庭問題」をさらに詳しく分析したところ、「子育ての悩み」が82%と大多数を占めたが、「夫婦関係の不和」(16%)や「家族の将来悲観」(11%)などもあった。「健康問題」の内訳は、「病気の悩み・影響(うつ病)」が79%に上った。
清水代表理事は、「リスクの高い属性の方たちには漏れなく重点的に支援を強化しつつ、そうでない方たちについても、支援が行き届くような状況をつくっていく必要がある」としている。【近藤綾加】
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