この夏、記録的な猛暑に見舞われている日本列島。40度を超える最高気温を各地で観測し、連日のように熱中症警戒アラートが発せられ、救急搬送される人も後を絶たない。そんな中、少しでも涼を呼ぼうと、見直されているのが江戸時代からの庶民の知恵「打ち水」だ。水をまくだけで、どれほどの効果があるのか――。
体感温度が1・5度下がる
打ち水は玄関先や庭に水をまくだけ、という至ってシンプルな行いだ。しかしながら、環境省のガイドラインによると、打ち水を行うことで、体感温度が1・5度前後下がるという。
気温自体に変化がなくても、水が蒸発する際、周囲の熱を奪う気化熱によって、体感温度が下がり、涼しく感じるのだ。
東京23区内の散水可能な面積約265平方キロメートルに散水することで、最大で2~2・5度程度、正午の気温が下がると予測されるとの研究データもある。
そうした効果に着目し、打ち水を広く呼びかけているのが、市民有志などでつくる「打ち水大作戦本部」だ。
8月1日を「打ち水の日」と定め、全国一斉に打ち水するイベントを呼びかけるなどの取り組みをしている。打ち水の呼びかけは2003年に東京で始まり、全国に広がった。国土交通省と環境省も後援しており、毎年推定500万人以上が参加している。
水も大切、風呂の残り湯や雨水で
年々、異常が際立つ気候変動に対応し、今年からは、これまでの夏限定の活動から、3月から「25度以上の日は打ち水しよう」と呼びかけを強化した。
近年では、春や秋でも暑さを感じることが多くなったことから、夏に限らず、習慣化して持続的な暑さ対策につなげたい狙いだ。
ただ、猛暑とともに渇水も問題になっている。そこで重視しているのが「水の循環」だ。限りある水資源を有効に活用するため、水道水の使用は避け、風呂の残り湯や雨水、米のとぎ汁といった「2次利用水」を使おうと呼びかけている。
これにより、節水意識を高めてもらうとともに、水が蒸発して雲になり、雨として再び降ってくるという自然の循環を身近に感じてもらうことを目指している。
朝夕の涼しい時間帯に
ただし、注意点もある。
日中の炎天下で打ち水をすると、かえって湿度を高め、蒸し暑さを助長するおそれがある。このため、環境省は朝夕の比較的涼しい時間帯に行うことを推奨している。
打ち水大作戦本部の浅井重範さんは「打ち水は暑さを和らげるだけでなく、水の大切さや自然とのつながりを感じるきっかけにもなる。日々の暮らしの中で、できるところから取り組んでもらえたら」と話している。【隈元悠太】
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