初戦相手は「神様のいたずら」 鳥取城北の69歳新監督 夏の甲子園

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第107回全国高校野球選手権大会の開会式リハーサルの前、一塁側内野席で仙台育英の須江航監督(右)と対談する鳥取城北の加藤重雄監督=兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で2025年8月4日午後3時3分、来住哲司撮影 拡大
第107回全国高校野球選手権大会の開会式リハーサルの前、一塁側内野席で仙台育英の須江航監督(右)と対談する鳥取城北の加藤重雄監督=兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で2025年8月4日午後3時3分、来住哲司撮影

 古希を翌年に控えて初めて高校野球の指導者になり、それから半年余りでチームを甲子園出場に導いた。第107回全国高校野球選手権大会に2年連続7回目の出場を果たした鳥取城北の新監督。自身も1973年の第55回大会でプレーしており、今大会の1回戦では52年前にも初戦で戦った相手とぶつかる。

 今年1月就任の鳥取城北の加藤重雄監督(69)は、7月28日の鳥取大会決勝で母校の鳥取西に13―5で勝利。今大会の第2日第1試合(8月6日午前8時開始予定)で対戦する仙台育英(宮城)とは、自身が高校2年の夏に左腕投手兼外野手として出場した甲子園大会で初戦の2回戦で戦った。「対戦相手が鳥取西、仙台育英……。神様がいたずらをしているのかな」と苦笑する。

52年前の勝利に貢献

 52年前の仙台育英戦では3番・右翼手で出場。一回裏に左翼線適時打を放つなど3打数2安打1打点の活躍で3―0の勝利に貢献したが、「余裕がなかったので試合内容を覚えていない」と打ち明ける。続く富山商との3回戦には3番・左翼手で出て、八回から救援登板して2回無失点に抑えたが、0―1で敗れた。

 3年生になるとエースで4番、主将も務める大黒柱。公式戦で無安打無得点試合(ノーヒット・ノーラン)を3度達成したが、甲子園には行けなかった。

47年前の東京六大学野球春季リーグ戦で明治大との1回戦で力投する法政大の加藤重雄投手(当時)=東京都新宿区の神宮球場で1978年5月20日 拡大
47年前の東京六大学野球春季リーグ戦で明治大との1回戦で力投する法政大の加藤重雄投手(当時)=東京都新宿区の神宮球場で1978年5月20日

 進学した法政大では1学年上に江川卓投手(元プロ野球・巨人)ら有力選手がそろい、東京六大学リーグ4連覇の黄金時代を経験。「すごい先輩たちがいたのでなかなか試合に出られず、ベンチ入りは3年生になってから」だったが、4年生では江川投手からエースの座を引き継ぎ、春に5勝、秋に4勝をマーク。日米大学野球選手権の代表にも選ばれた。

 卒業後は社会人野球の日本生命(大阪)で7年間プレー。現役最終年の85年に都市対抗野球大会で初優勝したものの、予選、本大会とも「ベンチ入りしたが、肩を痛めて投げられなかった」。その後は社業に専念した。

 東京で勤務していた58歳の頃、OB会に頼まれて母校の法政大のコーチとなり、週末に指導するようになった。2019年に当時の監督の不祥事などがあり、21年1月に64歳で監督に昇格。だが、コロナ禍で思うような活動ができない時期も長く、優勝に導けないまま23年限りで退任した。

「故郷に戻ってやってみないか」

 その後は野球から離れていたが、24年11月に思わぬ電話があった。大学の先輩で東京六大学歴代最多48勝を挙げた山中正竹・全日本野球協会会長(78)から「鳥取城北が監督のなり手を探している。故郷に戻ってやってみないか」との依頼だった。「母校ではないが、鳥取の野球界に貢献できるのなら」と引き受けた。

 初めて高校生を指導することに「大学生とは体や完成度、スピードなどは違うし、生活面でも飲酒・喫煙の可否などの違いはある」と指摘しつつも「こちらが求めることは同じ。より速く、より強く、より正確にプレーすること。投打ともフォームが大事であり、相手が高校生とか考えるより、野球がうまくなってほしいと教えている」と戸惑いはない。

教え子「最初はえぐい人が来ると…」

第107回全国高校野球選手権鳥取大会の決勝後、優勝インタビューに答える鳥取城北の加藤重雄監督=鳥取県米子市のどらやきドラマチックパーク米子市民球場で2025年7月28日午後0時10分、阿部浩之撮影 拡大
第107回全国高校野球選手権鳥取大会の決勝後、優勝インタビューに答える鳥取城北の加藤重雄監督=鳥取県米子市のどらやきドラマチックパーク米子市民球場で2025年7月28日午後0時10分、阿部浩之撮影

 法政大、鳥取城北とも寮生活を送る選手が多いことにも触れて「野球に打ち込むため、親元を離れてやってきた覚悟は素晴らしい。その気持ちを忘れるなと言い続けている点も(法政大コーチ・監督時代と)変わらない」とも。

 教え子たちを「能力の高い選手が多いし、素直な子が多い」と信頼する老将を、主将の平山暖也捕手(3年)は「最初はえぐい(経歴のすごい)人が来ると聞いたが、接してみたら優しい監督。だから(前監督時代と)違和感がないし、何でも相談できる」と慕う。

 夏の甲子園で鳥取勢は第96回大会(14年)の八頭の3回戦進出(1勝)を最後に、コロナ禍で中止の第102回大会(20年)を挟んで9大会連続初戦敗退中。加藤監督は3年前の優勝校でもある仙台育英との対戦に「高校野球の最高峰に位置するチームと当たるのは光栄。持てる力を出してロースコアの展開に持ち込めば勝機はあると思う」と意気込み、平山捕手は「監督が52年前に勝っている相手なので、僕たちが負けるわけにはいかない」と必勝を期している。【来住哲司】

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