
「授業の英語化をスタートします」――。東京大大学院工学系研究科のこんな宣言が話題を呼んでいる。
交流サイト(SNS)上では「それくらいやらないと世界の大学になれない」「高等教育を母国語で学べなくなる」などと賛否両論がある。
狙いはどこにあるのか。
東大大学院工学系副研究科長を務める津本浩平教授に話を聞くと、日本固有の事情が浮かび上がってきた。
英語の授業を「倍」に
<工学の分野では、英語が世界の標準言語であり、海外のトップ大学では、少なくとも大学院の授業については講義を英語で実施することが一般的です。本研究科においても、英語による授業が徐々に増えてきましたが、まだ多くの授業は日本語で行われています>
東大大学院工学系研究科は昨年度末、在学生向けの「大学院の授業の英語化について」と題した文書で学内の現状をそう説明し、授業の英語化を始めることを発表した。
津本教授によると、既に4割ほどの授業が英語で実施されているという。
目標は、英語の授業の割合を、今年度中に6割、来年度中に8割まで引き上げることだ。
一気に英語の授業を倍にする計画に対し、一部の教員からは戸惑いの声が出たという。
日本では、明治時代から英語やドイツ語などの外国語で書かれた学術文書を日本語に訳して学んできた歴史がある。
このため「せっかく日本語で勉強ができる環境があるのに、わざわざ英語に戻すのか」「日本語は、訳本の教科書がある数少ない言語だということは大切にしなくてはならないのではないか」といった声もあった。
4割が留学生
だが、「授業の英語化を進める」という方向性については、賛成する教員の方が多かった。
工学系研究科では大学院生の約4割を留学生が占める。
中でも、橋や道路をはじめとするインフラの整備や運営に携わる人材を育成する「社会基盤学専攻」では特に留学生が多く、1990年代から大学院の…
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