石破茂首相と会談するために23~24日に訪日する韓国の李在明(イジェミョン)大統領は22日、毎日新聞など日本の一部メディアとの書面インタビューに応じた。李氏は歴史問題を巡るこれまでの日韓合意や解決策について、「過去の大統領も国民が選んだ国家の代表だ。その合意や政策を簡単に覆すことはできない」と維持する考えを表明した。更に、1998年の小渕恵三首相と金大中(キムデジュン)大統領による日韓共同宣言に代わる「新たな韓日関係に関する共同宣言」の策定に意欲を示した。
2018年に韓国最高裁が日本企業に賠償を命じた元徴用工訴訟を巡っては、保守系の尹錫悦(ユンソンニョル)前政権が政府傘下の財団が賠償を肩代わりする案を推進してきた。一部の原告は日本側の謝罪や関与がないとして、解決金の受け取りを拒否しているが、進歩系の李政権でもこの枠組みを維持する考えを示した。
また、「国家間の関係で信頼と、政策の一貫性はとても重要だ」とも強調。歴史問題を巡っては「解決に至れなかった問題が残っているのも事実だ」とした上で、日韓関係においては歴史問題だけにとらわれてはいけないと強調した。
一方、被害者と韓国国民のより大きな共感を得ることで「両国間の発展のための持続的な動力も担保できる」と指摘。日本政府には「過去を直視する」ことを繰り返し要請した。
98年の共同宣言は日本側が歴史問題で「痛切な反省とおわび」を表明し、韓国もこれを評価したうえで、未来志向的な関係を目指す内容だ。李氏はこの宣言の「上書き」を念頭に、慰安婦問題などでの合意の維持を表明しつつ、歴史認識で日本に要求も突きつけている。
李氏は、韓国国民に現在の日韓関係を肯定的に見ている人が多いことに言及し、「グローバル経済、安全保障環境の大転換の中で、韓日間の共生と協力が必要だと体感している証拠だ」と説明。拉致問題については「被害者家族の無念と日本の拉致被害者問題の解決に向けた努力に深く共感している。人道主義の次元で必ず解決されなければならない」との認識を示し、北朝鮮との対話の糸口を模索する必要があると指摘した。
李氏と石破氏は6月の首脳会談で首脳が相手国を相互訪問する「シャトル外交」の継続で一致しており、今回の訪日はその第1弾となる。李氏は石破氏と「虚心坦懐(たんかい)に意見を交換する」とし、今回の訪日が「未来志向的な協力の足場を固めるきっかけになることを願う」と期待感を示した。【ソウル日下部元美】
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