無線操縦ヘリコプターの趣味が高じて、ドローンオペレーターになった福山武治さん(62)=札幌市。操縦方法がヘリもドローンも同じだったことが奏功し、導入当初から操縦技術にたけたオペレーターとして高い評価を得た。
時代の波に乗り仕事舞い込み
2015年に脱サラし、合同会社「北海道スカイビュー」を設立。時代の波に乗り、仕事が次々と舞い込んだ。
初めてドローンを買ったのは15年。その前年に飛行中の機体を制御する装置を購入し、約半年をかけて自作ドローンもつくっていた。
言うまでもなく、市販ドローンの性能は自作ドローンのはるか上を行っていた。札幌のテレビ局から「生中継でドローンを使いたい」とオファーがあったのも、ちょうどこの頃だ。ニセコの雄大な山々と五色温泉を映し出す仕事だった。
当時はまだ珍しい存在だったドローンならではの事件も起きた。
15年4月、ドローンが首相官邸に落下。出頭してきた当時40歳の無職男性が威力業務妨害容疑で逮捕されたのだ。男性は「反原発を訴えるために総理官邸にドローンを飛ばした」などと供述した。
この事件をきっかけにドローンの飛行ルールを定めた改正航空法が施行され、人口密集地での飛行は原則禁止された。「事件までは自由に飛ばせたが、事件をきっかけに白い目で見られることもあった」
映画「ゴジラ-1.0」の撮影も
とはいえ、迫力ある映像を従来より手軽に撮影できるドローンの存在は評判を呼んだ。テレビ局関係者らから数珠つなぎでオファーが入り、CMの仕事も入るようになった。
「会社を設立した時、『仕事は来るだろうか』と不安もあった。でも、予想以上に仕事が入り、苦手な営業をしないで済んだ」。道内各地の自然を上空から映した「マルチヘリで巡る厳冬の北海道」(札幌映像プロダクション)は、道内の優れた映像作品を選ぶ「北海道映像コンテスト2015」のデジタルコンテンツ部門最優秀作品に選ばれている。
CMで言えば、歌手・宇多田ヒカルさんが出演したサントリー天然水のほか、Amazonやトヨタなど計約40本の制作に参加した。
映画は藤井道人監督の「デイアンドナイト」(19年)を皮切りに約20本の作品に参加。米アカデミー賞視覚効果賞を受賞した「ゴジラ-1.0(マイナスワン)」(23年)では、ゴジラが海から出てくるシーンや群衆が銀座の街を逃げ惑うシーンなど約20カットに関わったという。
「いかに(監督が)撮ってほしい映像を撮れるかが勝負。現場の経験を積み、監督の言っていることを理解して飛ばすことが必要で、その経験値が自分の武器だと思っている。難しいリクエストをクリアすることが楽しい」
「軍事利用は絶対に許されない」
23年からは国の「無人航空機操縦士」資格が取得できるスクールも開校。無線操縦ヘリで培った全国レベルの操縦技術を受講生に伝授している。
「ドローンは使い方一つで武器にもなる道具であり、実際に戦争でも使われている。YouTubeを見ていても、ドローンにエアガンをつけて空中で発射するような動画もアップされている。そんな使い方や軍事利用は絶対に許せない。ドローンという新しい技術とその使い方を正しく受講生らに伝えることが使命だと思っている」
インフラ点検や測量、物流などドローンの活躍する現場は着実に広がっており、オペレーターの存在は今後、より一層重要になるはずだ。【高山純二】
福山武治(ふくやま・たけはる)さん
1963年生まれ、札幌市出身。札幌琴似工高卒。クレーンのオペレーターなどを経て、2015年に合同会社「北海道スカイビュー」を設立した。同社代表社員。
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